「見た目じゃない」差別が根強い?ジプシー系コミュニティの現実
スペイン、コルドバ。44歳のラモン・ロマン氏が、デジタルマーケティング企業Zenditalを設立し、故郷ルーセナで新たな道を切り開こうとしている。しかし、彼の背後には、決して平坦ではなかった人生が隠されている。
大学卒業率はわずか0.8%
ラモン氏が所属するジプシー系コミュニティからの大学卒業者は、なんとわずか0.8%という驚くべき数字だ。両親の強い後押しを受け、彼はコミュニケーション・オーディオビジュアル分野で学位を取得。その経験を活かし、Zenditalを立ち上げた。これは、彼自身の成功物語であると同時に、社会が抱える課題を浮き彫りにしている。
ラモン氏は、ジプシー系の人々に対する社会的な認知度の向上を認めつつも、依然として根強い偏見の存在を訴える。「ジプシーだと告げると、『どう見てもジプシーらしくない』と言われることがよくある」。SNS上でのヘイトスピーチの増加も、状況を悪化させている。
Fundación Secretariado Gitanoのサラ・ギメネス事務総長は、こうした発言を「巧妙な差別」と表現する。無意識のうちに発せられる言葉は、相手に大きな傷を負わせる可能性がある。ギメネス事務総長は、社会全体の無関心さこそが問題だと指摘する。「多様なコミュニティに関心を持ち、理解しようと努めることが、私たち全員の課題だ」。
職歴における差別、住宅問題、教育格差 ギメネス事務総長によれば、ラモン氏のような直接的な差別を経験するケースは少ないものの、企業がジプシー系の従業員の出自を知ると、サービスを拒否したり、採用を見送ったりする事例が報告されている。また、住宅を借りる際にも、家主や不動産業者からの拒否に直面することがあるという。教育現場では、学校不適応の問題が深刻で、ジプシー系の生徒の学校放棄率は驚くべき86%に達する。貧困率も高く、ジプシー系の家庭の86%が貧困線以下で生活し、子供たちの貧困率は89%に達している。
ジプシー系コミュニティは、歴史的な背景から、エンセナダ侯爵の名前の変更や、教科書への「サマダリペン」(追放)の記載などを求めている。ギメネス事務総長は、「歴史と文化への認識不足が、偏見や差別を助長している」と強調する。

法整備が急務の現状
ギメネス事務総長は、ジプシー系の権利を保護するための包括的な法律の制定を強く求めている。「現状では、戦略や計画はあるものの、法的拘束力がない。そのため、ジプシー系の人々を保護し、教育をはじめとする優先課題に取り組むための独自の法的枠組みが必要だ」。
「スペインに600年以上も前から住んでいる私たちジプシー系の人々が、いまだに社会的に最も疎外されているグループの一つであることは、非常に残念だ」とラモン氏は訴える。「若者たちが自分の名前や外見のために苦労したり、女性がスーパーマーケットで警備員に追われたりする現実がある。私たちは、社会の一員として認められるべきだ」。
ジプシー系の国際デーは、1971年にロンドンで開催された世界ロマー人/ジプシー会議で制定された4月8日。この日を機に、ジプシー系のアイデンティティを完全に認識し、差別との闘いを加速させるための法的枠組みを確立することが、喫緊の課題となっている。