「特別な関係」の変質:トランプ支持に傾倒する英国保守派、ブレクジットの影で新たな秩序を
かつては英国がアメリカの「若い子」に知性と文化の指導力を与えるべきだと考えていた「特別な関係」。しかし、今や英国保守派はトランプ・アメリカへの忠誠を表明し、その影響下へ自国の主権を委ねようとしている。その背景には、グローバル資本の新たな支配構造における英国の重要性と、その支配層の思惑がある。
保守派の転換、その理由とは
第二次世界大戦後の英国とアメリカの関係は、当初から二国が互いを同等の存在と見なしていた。アメリカの圧倒的な軍事力と経済力は、その優位性を明確に示していた。しかし、当時の英国保守派の一部には、「アメリカ帝国の属州としてのギリシャ」というように、アメリカの支配を警戒する声も存在した。英国はアメリカの「指導者」として、その文化や政治的影響力を維持しようとしたのだ。
1950~60年代、エノック・パウエルは、アメリカの「自己決定」を推進したことで英国帝国の崩壊を加速させたと批判し、アメリカに対する強い反感を抱いていた。しかし、現代の英国保守派は、移民問題やEU離脱といった点でパウエルの立場を賞賛する一方で、トランプ・アメリカへの支持を強めている。その姿勢は、単なる「特別な関係」の維持ではなく、イデオロギー的な従属を意味する。
英国右派メディアは、トランプ支持を積極的に推進し、その文化的な規範や戦術を自国のものとして取り入れようとしている。ソーシャルメディアの普及により、かつては主流だったアメリカ文化への抵抗意識は薄れ、むしろトランプ・アメリカの価値観を積極的に受け入れているのだ。
この変化の背景には、英国が依然としてグローバル資本の重要な拠点であるという事実がある。金融機関、会計事務所、法律事務所、オフショアテリトリー、名門学校など、英国は資本を安全に保管するための重要な場所として、世界中のエリート層にとって魅力的な存在であり続ける。イーロン・マスクは、その戦略の一環として、英国のポピュリスト右派への投資を拡大し、彼らの声を積極的に発信している。
トランプとスターマー首相の対立が激化する中、英国右派はトランプへの忠誠を強く示している。ナイジェル・ファーガースは、トランプを支持する姿勢を公然と表明し、スターマー首相に圧力をかけようとしている。トランプのイランに対する強硬姿勢や地政学的再編の動きは、英国が新たな世界秩序の中でどのような役割を果たすのかを不確かなものにしている。
かつては自国の地位を真剣に考えていた英国保守派は、今や外国の力に自国の政治的アイデンティティを委ねようとしている。トランプの新たな世界秩序の中で、英国は新たな「 compradores」(買手)としての役割を担うことになるだろう。それは、英国の主権の低下を伴う、新たな支配構造の始まりを告げている。
トランプは、英国を自身のグローバルビジョンの次の拠点として位置づけている。彼のツイート頻度はアメリカよりも英国に関するものが多く、英国の金融、法律、教育システムは、資本家にとって魅力的な投資対象であり続ける。この動向は、英国がかつて持ち上げてきた「大英帝国の遺産」を、新たな形で再定義していると言えるだろう。
この変質は、単なる政治的なシフトではない。資本主義のグローバル化と、それに伴う権力構造の変化を象徴する出来事なのだ。