「連邦所得税の差し押さえ」抵抗運動が再燃、イラン情勢と国内政治が背景に
テキサス州ヒューストンで、1月10日に開催されたイランに対する抗議デモで、参加者が「ICE反対」と書かれた横断幕を掲げた様子。

連邦所得税の差し押さえ運動、再び活況を博す
アメリカで、連邦所得税の支払いを拒否する動きが再び加速している。シカゴ在住のレイチェル・コーエンさんは、自身のインスタグラム動画で、連邦政府への納税を表明。「私は、イランやガザ地区での拘留を続ける移民局(ICE)の活動を資金提供することを望まない」と語った。この動画は14万件以上の「いいね」を獲得し、多くの人々が共感を示している。
これは決して新しい抵抗の形ではない。1773年のボストン茶会事件や、南北戦争時代の電話税抵抗運動など、歴史的にもアメリカには課税に対する抵抗の歴史がある。しかし、近年、この動きは再び注目を集めている。特に、ドナルド・トランプ氏の再選以降、その勢いは増している。
ナショナル・ウォー・タックス・レジスタンス・コーディネティング・コミッティ(NWTRCC)のリン・ライアン氏は、「トランプ氏の再選以降、数回、連邦税を支払わない動きが活発化した」と説明する。その要因として、政府機関の効率化、バイデン政権下でのイスラエルへの資金援助、そしてベネズエラに対する軍事介入などが挙げられる。
税金抵抗の形態にはリスクも伴う。差し押さえ、銀行口座の凍結、さらには財産の没収といった可能性もある。しかし、コーエンさんは、これらをリスクと捉えつつも、自身の行動が、政府の資金配分に対する強い不満と、人道的な問題に対する関心の表れだと考えている。彼女は、多くの人々が、税金が本当に自分たちの生活を豊かにするために使われているのかを問い始めている。
近年、連邦歳入庁(IRS)の職員数は、過去1年で27%も削減された。専門家たちは、税金の処理が滞る可能性を懸念している。一方で、過去の事例では、銀行口座の差し押さえなどの措置が取られたケースもある。
コーエンさんは、大企業を辞め、移民の権利擁護活動に身を投じた。彼女にとって、税金抵抗は、自分自身の倫理観と、アメリカ社会における権力構造に対する抗議の表現だ。彼女の行動は、多くの人々に、自分自身も何かできることがあるのではないかという希望を与えている。彼女にとって、これは単なるリスクではなく、行動を起こすことの正当性を証明する手段となっている。
この動きは、アメリカ社会における政治的意識の変化を映し出している。従来の保守的な抵抗運動とは異なり、より多様な人々が、政府の政策に疑問を呈している。その背景には、格差の拡大、社会保障の脆弱化、そして戦争への不満など、様々な要因が複雑に絡み合っている。
しかし、税金抵抗が、社会にどのような影響を与えるのか、その先行きは依然として不透明だ。社会の底辺に存在する人々が、自らの権利を守るために、どのような選択をするのか、その答えは、今後のアメリカ社会の動向にかかっている。