ウェールズの伝統劇、新たな息吹を - 『ウندر・ミルクウッド』現代的な解釈に注目
銘酒「リンドリー」の琥珀色を思わせる、古都モルドの劇場、シアター・クロイド。その舞台に、ウェールズの国民的戯曲『ウندر・ミルクウッド』が、鮮やかな色彩で蘇っている。伝統と革新が交錯するこの上演は、単なるリバイバルではない。新たな時代に向けた、ウェールズの魂の叫びと言えるだろう。

伝統と革新が織りなす、記憶と幻想の舞台
1954年にラジオで初演され、ロバート・ボルトの『全能の男』と並ぶ、稀有な音の演劇から劇場作品への転換を遂げた『ウندر・ミルクウッド』。トーマス・ディランの詩的な言葉は、聴覚的な想像力を掻き立てるものだったが、今回の上演では、その世界観が視覚的に具現化されている。舞台監督のヘイリー・グリンドルが創り出す、モルドの街、リレグブの風景は、観客をその奇妙で魅力的な世界へと誘う。
2021年のナショナル・シアター版では、リアリズムを重視し、マイケル・シーンがナレーターを務めるフレームストーリーを加えることで、認知症を患う父の記憶を呼び起こす試みが行われた。一方、今回のシアター・クロイド版は、ファンタジーや超自然的な要素を強調。スティーブン・ Sondheimとジェームズ・ラパインの『ウィキッド』の影響を感じさせる、伝説と民話が織り交ざった物語として描かれている。
舞台は、リレグブの住民たちの人生を、11人の俳優が多重人格で演じるという、大胆な構成を採用。ウェールズの芸術家集団Craidd、特に聴覚、身体、神経多様なアーティストを含む彼らの参加は、演劇における多様性の尊重を象徴している。イギリス手話も積極的に取り入れられ、言葉の壁を越えた共感を促す。
舞台上で投影されるテキストは、ディランの言葉の軽妙さを際立たせる。しかし、ウェールズ語の原典であるリレグブを使用しているため、英語を話す観客には悪口の裏の意味が伝わらないという点も留意すべきだろう。マクセン・マクケイが、死神の役や、妻殺しを企むパーグの役など、複数の役を演じ、ユーモアを添えている。カーライン・パーカーは、5人の妻や母を演じ分け、ショーン・カールセンは、聖職者と悪魔を併せ持つ役を演じ、ジョージア・グリフィスは、希望の裏に隠された過去を歌い上げる。オリバー・ヴィブランドスが作曲した音楽は、特にオーガン・モーガンが喜ぶような、独特な雰囲気を醸し出している。
『ウインター・ミルクウッド』は、一見、軽薄なノスタルジーとして片付けられることもある。しかし、物語の根底には、暗い影が潜んでいる。ナレーターの一人、ボイス・ワンが語るように、「この街には、恐ろしい人々が住んでいる」。その中に、殺人を企む者、性犯罪者、そして亡者も含まれているのだ。この点において、トーマスは、スローン・ワイルダーの『オア・タウン』に影響を受けている可能性があり、両作品は、発表時期を考えると、異例の二部構成と言えるだろう。
シアター・クロイドでの公演は、3月21日から4月4日まで。ウェールズの魂が、舞台上で鮮やかに蘇る瞬間を、ぜひ体験してほしい。