緊急避難時に命を危険にさらす乗客続出…航空業界、罰金も検討
緊急時の航空機避難において、乗客がスマートフォンでの撮影や手荷物の回収に固執し、避難を遅らせる危険な行動が頻発している。航空業界関係者は、罰金を導入することも視野に入れていると示唆し、早急な対策が求められている。
90秒以内の避難を阻む手荷物問題
航空機は、緊急時に90秒以内に全乗客が避難できるよう設計されている。しかし、手荷物を回収しようとする乗客が避難経路を塞ぎ、非常口や通路を妨害する事例が多発している。さらに、手荷物が非常用スライドに損傷を与えたり、負傷者を生じさせる可能性も指摘されている。国際航空運送協会(IATA)は、安全キャンペーン「命を救え、バッグではない」を開始し、乗客に対して手荷物を置いて避難するよう強く呼びかけている。
IATAのニック・ケアレン最高執行責任者によると、乗客の約4割が手荷物を置いて避難するという義務を知らないという調査結果が出ている。「このメッセージを徹底的に周知する必要がある」とケアレン氏は強調。罰金導入についても、「実現可能であれば検討する価値がある」と述べている。

Faaも警告、乗務員の苦悩
米連邦航空局(FAA)も、緊急時に乗務員の指示に従わない乗客が増加していると警告している。ブライアン・ベッドフォード事務局長は、「緊急時には、迅速な行動と指示への絶対的な服従が不可欠だ。乗客は手荷物をすべて置いて避難しなければならない」と強く訴えている。
一方で、専門家は、緊急時の「闘争・逃走」反応が、乗客が手荷物を持ち出そうとする行動の背景にある可能性を指摘している。TikTok世代の乗客の中には、緊急事態の映像から利益を得ようとする動きも見られるという。西南航空のラケル・ラウダーミルク安全管理部長は、「乗客に直接的に指示し、行動を強要する必要がある。これは難しいが、我々が取り組むべき課題だ」と語る。

過去の痛ましい教訓と今後の対策
IATAのウィリー・ウォルシュ事務総長は、1985年のマンチェスター空港事故を振り返り、「航空機からの避難は、軽々しく決定されるものではない。避難が発生した場合は、躊躇なく脱出するべきだ」と強調した。しかし、IATAの動物キャラクターを起用した安全キャンペーンが、乗客の意識を変えることができるかどうかは不透明だ。ラウダーミルク氏は、「顧客を失うわけにはいかない。死体の映像を見せることなく、現実を伝える方法を見つけなければならない」と苦悩している。
手荷物よりも命を優先すること。航空業界は、罰金導入や手荷物収納ボックスの自動ロックなど、より強硬な対策を検討する必要があるだろう。しかし、最も重要なのは、乗客一人ひとりの意識改革だ。緊急時には、冷静さを保ち、乗務員の指示に従い、手荷物を置いて避難することが、自身の命を守るための唯一の方法であることを、強く認識すべきである。
